【砂の城】インド未来幻想
シャニは傍らに付き添った痩せた少年に手綱を引かれ、人の波間を通り過ぎ、タージ=マハル基壇の真下までやってきた。呆然自失した大群は皆シャニに魅せられ、シャニに吸い込まれるように華やかなその背を見つめる。――シャニをか? いや、シャニの『財産』を、だ。
けれどサリーの裾で顔と髪を隠し、萎縮しながらじっと固まるナーギニーにとって、彼の姿は至極不気味な存在でしかなかった。
身長はかなり低く小太りで、大きく張り出した腹部の為に、鞍に背もたれがなければ今にも後ろへ倒れてしまいそうだ。少々白めの肌には茶色い斑が点在し、太い首はもはや見えない程、垂れ下がった頬で隠されている。人を見下したような皺の集中する瞼の中には、ギョロリとした黒目が鈍く光り、眉は薄く鼻は大きく、唇は何もかもを舐め尽くす炎の舌をチラチラさせた、厚ぼったく大きな『闇の穴』であった。
けれどサリーの裾で顔と髪を隠し、萎縮しながらじっと固まるナーギニーにとって、彼の姿は至極不気味な存在でしかなかった。
身長はかなり低く小太りで、大きく張り出した腹部の為に、鞍に背もたれがなければ今にも後ろへ倒れてしまいそうだ。少々白めの肌には茶色い斑が点在し、太い首はもはや見えない程、垂れ下がった頬で隠されている。人を見下したような皺の集中する瞼の中には、ギョロリとした黒目が鈍く光り、眉は薄く鼻は大きく、唇は何もかもを舐め尽くす炎の舌をチラチラさせた、厚ぼったく大きな『闇の穴』であった。