【砂の城】インド未来幻想
 やがて(ソーマ)は満ちた状態で現れ、逃げる太陽(スーリヤ)を淡く照らし出した。天と地と墓廟が真っ赤に染め上げられた夕暮れ、タージの左右には白と赤の真円が遠く並ぶ。方形の舞台四方に松明(たいまつ)が灯され、複雑な揺らぎは砂粒一つ一つに小さな影を作り出した。

 炎・光、そして闇と影の凹凸。砂以外に何ものも存在しない空間さえ、何処か高尚に見える。

 騒めきは次第に薄らいでいった。始まりの雰囲気を醸し出す演出だろうか。ついには沈黙に包まれた会場で、ずっと目を閉じたまま玉座に坐していたシャニは、一つ深い息を吐き勢い良く立ち上がった。

 両腕を大きく広げ高々と掲げる。あたかも獲物をとぐろに巻き込んだ大蛇の如き貪欲さと快楽の微笑。囚われし民衆が捕獲者の力に屈した時、彼はようやく声を発した。


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