【砂の城】インド未来幻想
 ヒンドゥの民は幾重にも続く輪廻の繰り返しの中で、その時だけを待っていた。シヴァが踊りの王(ナタラージャ)として世界の破壊と創造、死と再生を表現するターンダヴァを踊るその時を。

 砂塵転がる大地は今、安定期とも思える時を紡いでいた。風は弱まり、砂嵐も竜巻も久しく起きていない。

 しかしそれは嵐の前の、刹那な静けさであったのかもしれない。


 シヴァ――救世主。


 (カルマ)は既に動き始めている――。



[註1]カリ・ユガ終末論:ヒンズー教のヴィシュヌ派によれば、ヴィシュヌの化身カルキが現れ滅ぼす、とされていますが、こちらではシヴァ派の思想を用いています。


[註2]全能神三身説:三位一体説もございますが、日本でも広く知られている説でお送りします。


[註3]四つの時代:神の一年は人間の三六〇年に等しいので、四千八百年は実際には一七〇万八千年となります。クリタ・ユガはサティヤ・ユガとも呼ばれ、その後にトレーター・ユガ、ドヴァーパラ・ユガ、カリ・ユガと続き繰り返されます。


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