【砂の城】インド未来幻想
「もしかして……あなた、ガネーシャ村のナーギニーでしょ? 隣で休んでいたなんて気付かなかったわ。わたし一度あなたに会ってみたかったのよ! ……ああ、ごめんなさい。自己紹介まだだったわね。わたしはガルダ村のシュリー。どうぞよろしく」
『シュリー』と名乗った目の前の少女は、好奇心に満ちた瞳で食い入るように見つめていた。その熱視線に囚われたように、ナーギニーも大きな双眸を見開かせたまま、瞬くことも逸らすことも出来なかった。
シュリーは当たり前の行為として握手を求め、初めて家族以外とこれ程の至近距離で相対したナーギニーは、余りの動転振りに一切の返答も身じろぎも出来なかった。そんな彼女の右手を取り、シュリーは一方的な握手を交わす。自分の他には五人の掌しか知らないナーギニーのそれは、驚くほど温かなシュリーの肌からいつしか熱を吸い取り、震えていた身も心も不思議と凪いで、今までに味わったことのない穏やかな境地が全身を巡った――。
『シュリー』と名乗った目の前の少女は、好奇心に満ちた瞳で食い入るように見つめていた。その熱視線に囚われたように、ナーギニーも大きな双眸を見開かせたまま、瞬くことも逸らすことも出来なかった。
シュリーは当たり前の行為として握手を求め、初めて家族以外とこれ程の至近距離で相対したナーギニーは、余りの動転振りに一切の返答も身じろぎも出来なかった。そんな彼女の右手を取り、シュリーは一方的な握手を交わす。自分の他には五人の掌しか知らないナーギニーのそれは、驚くほど温かなシュリーの肌からいつしか熱を吸い取り、震えていた身も心も不思議と凪いで、今までに味わったことのない穏やかな境地が全身を巡った――。