【砂の城】インド未来幻想
「明日の大会、楽しみにしているよ。……君の踊りが見られることをね!」
言い終えるや一気に駆け出す姿から、ほんの数秒青年の目元が光に晒された。ターバンからはみ出した艶のある前髪と、凛々しい眉に優しげな眼差し。ナーギニーの大きく見開かれた瞳は、かち合った途端に眩さを感じた。頬が燃えるように熱い。まるで注がれた熱視線に、点火されてしまったように。
「あ……あ、のっ――」
ナーギニーの昇ってきた西からの階段には、対となる東へ降りる対称の階段があった。そちらへ走り寄った青年の背中は、既に声の及ばぬ距離まで離れていた。温かく身を包む上質な絹をギュッと握り締める。返さなければ――その焦燥がやっと言葉になって溢れ出たが、それは何歩も遅かった。
「ナーギニー!」
シュリーの声は、もう基壇の真下まで近付いていた。
「シュリー!」
ついに彼女に届く程の声でその呼びかけに応えたナーギニーは、青年とは逆の方向となる西の階段を駆け降りた。床に着く裸足の柔らかな足裏は、もう冷たさなど微塵も感じることはなかった。
風に揺れる白い衣は、淡い蓮の香りがした――。
言い終えるや一気に駆け出す姿から、ほんの数秒青年の目元が光に晒された。ターバンからはみ出した艶のある前髪と、凛々しい眉に優しげな眼差し。ナーギニーの大きく見開かれた瞳は、かち合った途端に眩さを感じた。頬が燃えるように熱い。まるで注がれた熱視線に、点火されてしまったように。
「あ……あ、のっ――」
ナーギニーの昇ってきた西からの階段には、対となる東へ降りる対称の階段があった。そちらへ走り寄った青年の背中は、既に声の及ばぬ距離まで離れていた。温かく身を包む上質な絹をギュッと握り締める。返さなければ――その焦燥がやっと言葉になって溢れ出たが、それは何歩も遅かった。
「ナーギニー!」
シュリーの声は、もう基壇の真下まで近付いていた。
「シュリー!」
ついに彼女に届く程の声でその呼びかけに応えたナーギニーは、青年とは逆の方向となる西の階段を駆け降りた。床に着く裸足の柔らかな足裏は、もう冷たさなど微塵も感じることはなかった。
風に揺れる白い衣は、淡い蓮の香りがした――。