【砂の城】インド未来幻想
シヴァ祭、そして舞踊大会二日目の朝は、其処彼処で様々な喧騒や笑い声を生み出しながら、それでもナーギニーを深い眠りから目覚めさせてくれることはなかった。(註1)
既に昨夜の宴を忘れてしまった華麗なる旅人達は、長いパレードの中に紛れ込んでいる。あのマントの青年も久方振りの城外の世界に、好奇心の瞳を持って屋台や曲芸を覗いているに違いない。
嵐や竜巻を望んでいたナーギニーの心に反して、アグラの街は一層麗らかな陽気に包まれていた。美しく大きな太陽。マンゴーのように甘い空気は砂を軽やかに躍らせている。
「ナーギニー、いい加減に起きなさい! ……一体この娘ったら、どうしたことだと言うの?」
人気のない広い仮宿舎の中に、母親の苛立った声が響いた。待ち合わせの時・場所共に娘を見つけ出せず、やっと探し当てたナーギニーは眠りに落ち込んでいたのだから仕方があるまい。怒りの裏側には無事であったという安堵の気持ちも含まれてはいたが、その唇が紡ぐ「ナーギニー」という呼び名は、自身の「幸せ」を導く道具の一つに過ぎない。
既に昨夜の宴を忘れてしまった華麗なる旅人達は、長いパレードの中に紛れ込んでいる。あのマントの青年も久方振りの城外の世界に、好奇心の瞳を持って屋台や曲芸を覗いているに違いない。
嵐や竜巻を望んでいたナーギニーの心に反して、アグラの街は一層麗らかな陽気に包まれていた。美しく大きな太陽。マンゴーのように甘い空気は砂を軽やかに躍らせている。
「ナーギニー、いい加減に起きなさい! ……一体この娘ったら、どうしたことだと言うの?」
人気のない広い仮宿舎の中に、母親の苛立った声が響いた。待ち合わせの時・場所共に娘を見つけ出せず、やっと探し当てたナーギニーは眠りに落ち込んでいたのだから仕方があるまい。怒りの裏側には無事であったという安堵の気持ちも含まれてはいたが、その唇が紡ぐ「ナーギニー」という呼び名は、自身の「幸せ」を導く道具の一つに過ぎない。