【砂の城】インド未来幻想
「あの……ね、シュリー。……シュリーの舞……とっても、素晴らしかった……!」

 やっとといった様子であったが、伝えたい全てを言い通せたことに、ナーギニーは喜びを隠せなかった。その努力に加え、言葉の持つ偽りのない想いがシュリーの胸に熱い物を込み上げさせた。思わずシュリーは少女を抱き締めていた。

「ありがとう! ナーギニー……」

 温かな抱擁に(いだ)かれて、ナーギニーの気持ちも緩やかにほどけていく。シュリーであれば……シュリーこそが、優勝に値する女性であると確信し、気付けばまだ決まらぬ未来の結果を祝していた。

「おめでとう……シュリー!」

「え……?」

 驚いたシュリーはナーギニーを即座に解放した。自分のことのように喜ぶ少女の瞳には、うっすらと水の膜が張られている。

「違うわ、ナーギニー」

「え……?」

 否定をする真っ直ぐな声と強い瞳に、今度はナーギニーが驚いてしまう。

「この大会、勝つのはわたしじゃないわ。勝つのは……あなたよ」

 刹那、断言までしたシュリーの言葉と真剣な表情は、少女にハッと息を呑ませ呼吸を止めさせた。けれどその時間はすぐに動く。シュリーが今までの穏やかな面差しに戻ったからだ。


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