【砂の城】インド未来幻想
「……だれ……か……――」
それでもナーギニーは何とか助けを求めるべく必死に口を開いた。しかし人の壁は益々厚く高くなり、もう逃げ道は何処にも見当たらなかった。異様な興奮と熱気がやがて意識を朦朧とさせる。足元がグラグラと崩れ落ちようとした頃、とうとう目の前が真っ白に染まり、そして――
――次に気付いた時には、先程シュリーと再会した菩提樹の樹の下だった。
「……また会ったね、お姫様」
それは以前聞いたことのある優しい声と台詞だった。
「あ……」
「昨夜の赤いサリーも良いけれど、この水色のパンジャビも可愛らしい」
彼ははにかんで、抱き上げていたナーギニーを静かに降ろし、おどけたようなウィンクを一つしてみせた。気を失う瞬間見えた白い視界は、この青年の絹の上衣だったに違いない。自分が彼に助けられたこと・此処まできっと抱えられてきたのだと気付かされて、ナーギニーはもはや声も出せなかった。
それでもナーギニーは何とか助けを求めるべく必死に口を開いた。しかし人の壁は益々厚く高くなり、もう逃げ道は何処にも見当たらなかった。異様な興奮と熱気がやがて意識を朦朧とさせる。足元がグラグラと崩れ落ちようとした頃、とうとう目の前が真っ白に染まり、そして――
――次に気付いた時には、先程シュリーと再会した菩提樹の樹の下だった。
「……また会ったね、お姫様」
それは以前聞いたことのある優しい声と台詞だった。
「あ……」
「昨夜の赤いサリーも良いけれど、この水色のパンジャビも可愛らしい」
彼ははにかんで、抱き上げていたナーギニーを静かに降ろし、おどけたようなウィンクを一つしてみせた。気を失う瞬間見えた白い視界は、この青年の絹の上衣だったに違いない。自分が彼に助けられたこと・此処まできっと抱えられてきたのだと気付かされて、ナーギニーはもはや声も出せなかった。