【砂の城】インド未来幻想
 普段はきつく結んでいる三つ編みを、今回は事前にほどいて、頭上から一本に結い上げていた。波のようなうねりを紡ぎ出した長く艶のある黒髪は、素肌を晒す苦痛を(やわ)らげるよう少女を守りながらたゆたう。中盤には回転を多く取り入れ、徐々に激しく回り出すにつれ、足首に()めた百を越える鈴の音が、シャンシャンと涼しげな音楽を奏でた。足元に跳ね上がる砂の粒子が、西陽に照らされて赤く輝く。半透明の布地から浮き立つ、数多(あまた)の瞳を釘づけにしてやまない脚線は、まるでルビーを散りばめられたように砂の舞に飾られた。

 舞踊が始まってからは、冷やかし交じりの観客も息を潜めて、ナーギニーの姿をじっと見つめていた。けれど彼女にはその沈黙が息苦しかった。恥ずかしさと緊張に慣れる間もなく、時は終盤へ向かい始める。やり場のない気持ちを今出来る全てに専念することで紛らわせ、ただひたすら肉体を揺さぶるその想いを、青年とシュリーに捧げていた。


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