【砂の城】インド未来幻想
[名前]
さらり、さらり……
するり、するり……
黒い大地と赤い空の狭間で、白い砂がレースのヴェールのように流されてゆく。
――ナーギニー、こっちへおいで……ナーギニー……
やがて砂は人型を造り、『それ』は彼女に手招きした。
――シヴァ様……?
彼女は広い砂漠の真ん中に居た。何も無い――いや、目の前の暗がりから現れたのは、荘厳なタージ=マハル。そして背後に砂の城。
――僕は、シヴァじゃない。君の名は? こっちへおいで……君……
少女はその声に振り向いた。砂の城を覆う巨大な透明ドームの入口から、優しく呼びかけるスラリとした青年。白いターバンに闇色の髪を絡ませながら、柔らかみを帯びて微笑んでいた。
ナーギニーは咄嗟に駆け出し、
――私の名前をお忘れですか? シヴァ様。私です、ナーギニーです。
――君はナーギニーじゃない。君は……
あと数歩で手が届くという所で、刹那足元から生まれた風が、砂を巻き上げ視界を遮断した。やがて風は竜巻となり、ナーギニーをも巻き込み、墓廟よりも城よりも、天高い果てへと全てを連れ去ってゆく。
――助けて、シヴァ様……私は、貴方様を――!
――シヴァ様――!!
するり、するり……
黒い大地と赤い空の狭間で、白い砂がレースのヴェールのように流されてゆく。
――ナーギニー、こっちへおいで……ナーギニー……
やがて砂は人型を造り、『それ』は彼女に手招きした。
――シヴァ様……?
彼女は広い砂漠の真ん中に居た。何も無い――いや、目の前の暗がりから現れたのは、荘厳なタージ=マハル。そして背後に砂の城。
――僕は、シヴァじゃない。君の名は? こっちへおいで……君……
少女はその声に振り向いた。砂の城を覆う巨大な透明ドームの入口から、優しく呼びかけるスラリとした青年。白いターバンに闇色の髪を絡ませながら、柔らかみを帯びて微笑んでいた。
ナーギニーは咄嗟に駆け出し、
――私の名前をお忘れですか? シヴァ様。私です、ナーギニーです。
――君はナーギニーじゃない。君は……
あと数歩で手が届くという所で、刹那足元から生まれた風が、砂を巻き上げ視界を遮断した。やがて風は竜巻となり、ナーギニーをも巻き込み、墓廟よりも城よりも、天高い果てへと全てを連れ去ってゆく。
――助けて、シヴァ様……私は、貴方様を――!
――シヴァ様――!!