婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「ジルベルトから聞いたんだね。イライザを心配したジルベルトにも、せっかくだから協力してもらおうと思ったんだよね」
「ですが『へえ、イライザと結婚したい? 命をかける覚悟はあるの?』と聞いたそうではございませんの! わたくしのジルになんてことをおっしゃいますの!?」
これはアリステル公爵の目を完全に覚ますための計画だった。
妻を亡くしたアリステル公爵は、イライザを王太子妃にすることで娘が幸せになると思い込んでいた。その思い込みを壊すため、ジルベルトにわざとバハムートの攻撃を受けるように指示していた。
もしジルベルトが大怪我をしても、ラティがいれば治癒できる。身をもって経験したからわかるけど、ラティの腕は間違いないし、その能力の高さも周りにアピールできる。最悪ヤバそうだったら僕が止めるつもりだった。
「イライザ、いいんだ。命をかけても俺はイライザを妻にしたかったんだ」
「ジル……!」
「ああ、イチャつくなら他所で頼むね。今ラティがいなくて余計に気が立っているから」
僕の目の前でいい雰囲気になりそうだったので、先に忠告した。
もう一週間もラティに会っていないから、幸せそうなカップルに目の前でイチャつかれたら本気でキレそうだ。
「フィルレス殿下に、そのようなことを言われたくありませんわ……!」
「イライザ、そろそろ落ち着いて」