婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

「ふふ、それは悪かったね。イライザが悪ノリしなければ、今後そういうことはないよ」
「わたくしが今後あのようなこと口にするわけありませんわ。それと、これが約束のお品物です」

 イライザの言葉で、ジルベルトが脇に抱えていた漆黒の布袋を執務机の上に置いた。ガチャッと硬質な音が聞こえる。袋の中を見ると、色とりどりの魔石がぎっちりと詰まっていた。
 
「うん、いいね。さすがアリステル公爵家だ。今まで見たものの中でも最高品質だよ」
「でもこれほど大量の魔石など、なにに使いますの?」

 魔石は魔道具の核として使われるけど、材料の持ち込みをする冒険者でもない限り、一般市民や貴族は出来上がった魔道具を購入するのが一般的だ。だからイライザが疑問に思うのも無理はない。

「バハムートの餌だよ。今回のご褒美だ」
「そうでしたの! では今回の魔石はわたくしからのお礼ということで、代金は不要ですわ」
「そう? では遠慮なく」

 さあ、早く政務をこなして愛しいラティのもとへ向かおう。
 仲良く帰っていくイライザとジルベルトを見ながら、そう思った。

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