婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
カールセン伯爵家の転落
私がラティシアを捨ててビオレッタを妻にしてから、カールセン家の運営はうまくいってなかった。
ラティシアと婚約していた時は儚げだったビオレッタは、婚姻すると湯水のように金を使い必要以上のドレスや装飾品を買って散財ばかりする。
私が注意をすると、愛してないのか、思いやりがないと逆に責められた。
屋敷の管理も杜撰になり、トレバーに聞くと使用人がすぐに辞めてしまうという。
募集をかけて新人がやってきてもまたすぐ辞めてしまって、今では応募すらない。そもそも屋敷の管理はビオレッタの仕事だ。
もう五年も経つのにビオレッタは、まったく女主人の仕事をする気配はない。私も手が回らないので、そちらはトレバーに任せることにした。
当主の役目で領地を視察するためにカールセン領へ行くのも、いつも私ひとりだった。
いくらビオレッタを誘っても、田舎は嫌だと言って妻がついてくることはなかったからだ。
領地を視察する際は、管理人を任せていた男が案内してくれた。その管理人の娘と特別な関係になったのは、自然の流れだ。
やがてタウンハウスに戻らず、一年のほとんどを領地で過ごすようになった。