婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
第一部 第四章 灰色の子犬を拾いました

コートデール公爵家の審判


 非常に残念なことに、アリステル公爵家の判定試験を合格してしまった私は、次の判定試験のためにコートデール公爵家に領地へ向かっている。

 本来は王都から二週間かけて馬車を乗り継いでいく土地なのだが、バハムートに乗せてもらい旅路についた。これで日程は三日ほどで済むので、かなりの時間短縮になる。
 なぜかフィル様が強く勧めてくれたので、ここはお言葉に甘えることにした。

「ねえ! 見て、渡り鳥がびっくりしているわ!」
《うむ、我は生物の頂点に君臨する竜だからな》
「それにすごい勢いで景色が変わるの、いつ見ても面白いわね!」
《ラティシアを乗せるのは久しいな》
「そうね、それにこんな長距離は初めてだわ! 空の旅って楽しい!」

 久しぶりに乗ったバハムートの背中は、私がまだ幸せだった頃となにも変わっていなかった。カールセンの領地でこっそりと乗せてもらった大きな背中は、今も温かく私を受け止めてくれる。

 雄大な景色を追い越しながら、私は空中旅行を存分に楽しんだ。




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