婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 上空から見たけれど、城壁周りは堀になっていて跳ね橋が下されていた。敷地は広く取られていて、街の住民が避難してきても受け入れられそうなほど余裕があった。跳ね橋を上げれば、敵の侵入を防げるだろう。違う角度で見るとわかることがたくさんあるものだ。

「……前にもこちらに来られたことがあるのですか?」
「いいえ、今回が初めてです。バハムートに乗ってきましたが、とても楽しい空の旅でした」
「すごいな、初見でそこまでご理解いただけるとは……」
「空から見ればみなさん気が付くと思いますよ?」
「いや、フィルレス殿下が自らお選びになったわけが理解できました」

 最後のひと言がよくわからなかったけれど、そんな話をしているうちにコートデール公爵様の執務室に着いてしまった。オリバー様がノックをしてから扉を開ける。

 扉を開けた正面に座っていたのは、眉間に深い皺を刻み、口はへの字に下げた厳つい男性だ。椅子に深く腰掛け、深緑の瞳はギロリと私を睨みつけている。鍛え上げた身体から放たれる覇気が半端ない。オリバー様と同じ夕陽色の髪なのに、穏やかさなんて微塵も感じなかった。

「よく来られたな。私がウォルト・コートデール。今回の審判(ジャッジ)だ」

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