婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 今回は予想通り、コートデール公爵様が審判(ジャッジ)! よかった、これで不合格になる確率が上がったわ!!

 内心の喜びが漏れないように、慎重に挨拶を返した。

「ラティシア・カールセンと申します。しっかりとお役目を果たしますので、なんなりと課題を提示してください」
「では早速だが、課題を発表する。我がコートデール公爵家では、魔物討伐ができるかどうかで合否を決める」
「魔物の討伐ですか……?」

 王太子妃になるご令嬢となれば、高位貴族から選ばれる。それならほとんどが攻撃魔法を操れるので、この課題も無理難題ではない。だけど、私は、カールセン家の一族は治癒魔法しか使えない。

 ——つまり、不合格確定では!?!?

 ますます歓喜が湧き上がるけれど、グッと堪えた。ニヤけそうになるので俯き、肩が震えるのは笑いを堪えているからだ。でもコートデール公爵様は私が課題に困窮していると思ったのか、さらに説明を続けた。

「森からやってきた強力な魔物が領地に住みつき、民が被害を受けている。どんな方法を使ってもいいから、この魔物を討伐してきてほしい。オリバーもカールセン嬢に協力するように」
「かしこまりました、精一杯やってみます」
「父上、承知しました」

 まずは旅の疲れがあるだろうということで、明日から魔物の討伐に参加することになった。

 故郷でお兄様たちと一緒に治癒士見習いとして参加していたと思い出し、懐かしく感じる。討伐は騎士たちに任せて、治癒に専念すれば役立たずだと周知できるだろう。今回でフィル様の婚約者から解放されるかと思うと、ウキウキして仕方がない。
 それでも翌日からの魔物討伐に備えて、早めに眠りについた。



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