婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
灰色の子犬だと思ったのですが
城に戻ってきた私たちは、まずは子犬を回復させようと治癒魔法をかけた。
「癒しの光!!」
淡く白い光が子犬を包み込み、どんどん怪我をふさいでいく。全体的に治癒を終えて、子犬の呼吸は安定しているようだ。
「よかった……こんな酷い怪我、魔物にやられたのかしら?」
「そうかもしれませんね。この半年は特に魔物が多くて、私たちの手も回らなくなっていたのです」
「魔物が増えていたのですか?」
「はい、以前はここまで街や村に被害が出ることはありませんでした」
なにか魔物が増えた原因があるのだろうか?
「バハムート、森で魔物が増える原因ってわかる?」
《さあな、我がいた頃はカールセンの山は平和であったな。今は知らぬが》
「うーん、それって魔物をまとめるボス的存在だったってこと?」
《魔物は強者に逆らえないものだ》
なるほど。魔物や自然界は弱肉強食だから、自分より強い相手には従うのだろう。それなら半年前からボス的存在がいなくなった可能性がある。