婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「すみません! 大至急治癒士を集めてください! 城下町で火災があって、派遣された治癒士だけでは足りません!!」
「っ! では外傷専門のチームと討伐専門のチームを出そう。私も行くから、ラティシアは治癒室を頼む」
一瞬で厳しい視線に切り替わったエリアス室長が、テキパキを指示を飛ばしていく。こういう時に迷いなく的確判断を下せる上司は、父のように頼もしい。
「わかりました。こちらに来る患者様は私が対応します。お気を付けて」
エリアス室長はふっと表情を緩ませて、他のチームの治癒士たちを引き連れて城下町へ向かった。これだけの応援を頼むのであれば、大規模な火災なのだろう。
私の癒しの光は効果が高い分範囲が狭いので、こういった災害時はあまり向いていないのだ。
いつものような怪我や病気は治せるので、しっかりと治癒室の留守を守ろうと決意した。
私だけ残って治癒室で書類の作成をしていると、ガタッとなにかがぶつかった音が聞こえてきた。話ができないほど具合の悪い患者が来たのかと、音の方へ振り返る。