婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
私が風邪を引くと予定がキャンセルになるだけで、見舞いにきたことはなかった。そういえば、もらった誕生日プレゼントも花束もドレスも、全部彼の好みだった。
どれだけ私の目が節穴だったのか。
でもそのおかげで治癒魔法に磨きがかかったし、治療に関する知識も深まった。それにフィル様の真っ直ぐな想いに気付くことができた。
もう少し、フィル様を信じてみてもいいかもしれないと思い始めていた。
城に戻ってくるとすでに知らせが届いていたのか、拍手喝采で出迎えられた。
フィル様は私をエスコートしてくれて、バハムートは手のひらサイズで私の肩に乗っている。オリバー様を先頭に、コートデール公爵様の執務室へ到着した。
「フィルレス殿下、ラティシア様、此度の魔物討伐見事でございました。オリバーもよくやった」
眉間の深いシワはそのままだけど、最初よりも穏やかな声音でコートデール公爵様が口を開いた。
「いいえ、私はあまりお役に立っていません。周りの皆様に助けられただけです」
「助けを得られるのもまたラティシア様のお力でしょう。人徳というのは容易く手に入るものではない」
「人徳など私にはわかりませんが、ひとつ気になることがあります」