婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
王城を出て街に入り、私は大通りを歩いていた。
すでに心臓は平静を取り戻している。計画書ではルートも決められていたので、きっとその中でレポートにしてほしい場所や状況があるのだろうと考えた。
ということは、それを外してレポートを書けば不合格間違いなしよね?
指定されたルートは貧民街の近くを通るものだから、きっとこういった問題点に関して意見がほしいのかしら? それなら問題点はフィル様に直接伝えて、レポートには別のことを書けばいいわ。
うきうきと街の中を歩き回り、いよいよ貧民街が見えてきたところで私はガラの悪い男たちに取り囲まれた。
「おい、こんなところでなにしてんだ?」
「遊び相手を探してるなら、俺らが楽しませてやるよ」
「なあ、いい女だから連れていこうぜ」
こんな男たちに絡まれるなんてついてないと、短くため息をついた。
治安の悪さはフィル様に相談するとして、このままでは危険だ。早くここから立ち去らないと。
「ごめんなさい、もう用は済んだのでこれから帰るところなのです。それでは」
「ちょっと、待てよ!」
そう言って方向転換しようとしたところへ、男の手が伸びてきた。
「あっ……!」
マズいと思った。でも、もう遅かった。