婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「ぎゃあああああっ!!」
悲鳴を上げたのは、手を伸ばしてきた男だ。
ばたりと倒れた男と私の間には、手のひらサイズのバハムートが渦巻く風の中に浮いていた。バハムートはギロリと男たちを睨みつけ、臨戦態勢を取っている。
こうなると思ったから、避けたかったのに。バハムートは私の危険を察知すると、すぐに現れて助けてくれる。しかも神竜になってパワーアップしているから、男たちの方が危ないと思う。
《我の友人に手を出すとは、いい度胸だ》
「うわっ! ド、ドラゴンか!?」
「くそっ! おい、行くぞ!」
《逃さん》
男たちは逃げようと背を向けた瞬間、バハムートが容赦なくドラゴンブレスを吐き出した。
「ぐわあああ!」
「ぎああああっ!!」
この騒ぎを見ていた街人が通報したようで、警備の騎士が駆けつけ事情聴取を受けた。
その日のレポートには、大きな騒ぎを起こしてしまい申し訳ないと書いておいた。順調な滑り出しだ。