婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「あの、ごめんなさい。シスター様はもうすぐ来ると思うので、ここで待っててもらえますか?」
「……そう、わかったわ。ではシスター様にルノルマン公爵家の使いが来ていると伝えてもらえる?」
少年はこくりと頷き、建物の中へ戻った。それから十分ほどして、ようやくシスターが現れた。
「まあまあ、お待たせしてごめんなさいね! ラティシア様ね、さあ、どうぞお入りになってください」
「はい、よろしくお願いいたします」
今日は終日孤児院の手伝いをしろということなので、ここにいる六人の子供たちと一緒に過ごすことになる。
そして私はすぐにおかしな空気に気付いた。
シスターは穏やかな笑顔を浮かべて、子供たちにさまざまな指示をする。生きていくための術を教えるために、手伝いをさせることはよくあることだ。
でも実際にやっているのは子供たちだけで、シスターは手を出すことがない。
子供たちは、カサついた肌と唇、艶のない髪、年齢よりも小柄な身体、サイズの合わない服、最近は木枯らしが吹くのに薄いシャツ一枚、そんな様子だ。
私が頭を撫でようと手を伸ばすと、ビクッと怯え肩をすくめる。
笑わない子供、極度に静かな子供、頭に手を伸ばすと怯える子供——