婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 庭園の花たちが霞むほど、美しく輝くプラチナの髪に、心の奥まで見透かされそうな紫の瞳。澄んだ空色のドレスには細やかな金糸の刺繍が施され、落ち着いた中にも高貴さがにじみ出ていた。
 婚約発表で見た時よりも、確実に美しくなっている。こんなにも私の心をかき乱す女を、自分のものにしたい。

「なぜ、お前がここにいるのだ? 心の卑しい者が来る場所ではないぞ」
「……お久しぶりでございます、カールセン伯爵夫妻」

 ラティシアはそう言って、完璧なカーテシーを披露する。指先まで優雅で美しい所作に思わず見惚れてしまった。

「お義姉様、お久しぶりね。でも、どうしてここにいらっしゃるの? そのフィルレス殿下の婚約者というのも、わたし信じられなくて……」

 ビオレッタはラティシアに怯えるふりをしながらも、攻撃している。なにも知らない人間が見たら、ビオレッタが攻撃されているように見えるだろう。

「今日はお前がフィルレス殿下の婚約者に相応しいか、調査のためにやってきたのだ。悪運もここまでだと思え」
「そうよ、お義姉様の性格では難しいのではないかしら? 無理はなさらず辞退した方がいいと思うの」

 私とビオレッタでラティシアは不適格だと糾弾するも、なんの反応もない。周りの招待客もなにも言わずに見守ってくれていた。

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