婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
裏切り者の末路②
「正当な後継者、か——それについては私にも話を聞かせてくれ」
声の主は、カールセン伯爵夫人であるわたしの前までやってきて、真っ直ぐに見つめてきた。
三大公爵のひとつルノルマン家の当主は、三十代半ばの女性だ。後継者とは言っても名前だけのわたしとは違い、公爵家の運営もこなし、政治的にも、また社交界でも大きな発言力がある。
……相手が悪すぎるわ。ルノルマン公爵じゃ、なにも言い返せないし、わたしの話術だけで言いくるめるのも難しいじゃない!
「それでは、カールセン伯爵夫妻とラティシア嬢はこちらへ」
男性のような言葉遣いで、わたしたちを誘導する。案内されたのは、アリステル公爵夫妻とコートデール公爵夫人、それから高位貴族の婦人が二名席に着いていた。
「ルノルマン公爵様、本日はお招きいただきありがとうございます。皆様もお元気そうでなによりでございます。お会いできて嬉しく思います」
そう言ってお義姉様は、またカーテシーをする。先ほどと寸分違わない所作をわたしに見せつけているようで、内心イラついた。