婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
お義姉様がある時、ドラゴンを連れて帰ってきたのは覚えている。わたしは怖くてたまらなくて、早く森に戻してきてと頼んだ。
でも義父も義母も義兄たちも『あれは幻獣だから、怖くないよ』と言っていたけど、そんなの嘘だと思っていた。
それに、カールセン家の治癒魔法は他となにか違うのか?
「まあ、よほど神竜バハムート様と絆が深いのね」
「本当にラティシア様の治癒魔法は見事ですわ! 夫の古傷も一瞬で治してくださったの」
「知っているわ! コートデール公爵の領地でも大活躍されたらしいわね」
「そこで神獣様までご友人にしたと聞いたわ。きっとそのお人柄が伝わったのねえ」
夫人達が口々にお義姉様を褒めている。いつの間に手を回したのか、わたしはどんどん肩身が狭くなっていった。
「そうだわ、カールセン家の正当な後継者ならば、あの特別な治癒魔法が使えるはずよね?」
「そうだな、カールセン家は特別な治癒魔法を血で受け継ぐと聞いている。正当な後継者なら、治癒魔法が使えるということだ」
「ねえ、カールセン伯爵夫人、ぜひその治癒魔法を見せていただけないかしら?」
ルノルマン公爵が追い打ちをかけ、アリステル公爵夫人がアルカイックスマイルを浮かべて迫ってくる。