婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「まずな、優先的に我が国の産物を輸入してくれると言ってな。その際の関税も他国より優遇されるし、帝国相手の商売なら規模が違う。これからの発展も十分見込める。なにより、いざという時に帝国軍が助けてくれるのだ!」
「で、見返りはなんですか?」
「う、うむ……それはな、フィルレスとエルビーナ皇女の婚約だ」
「…………」
本当に変わらない。
僕が産声を上げた時から、陛下にとって僕は駒でしかない。別になんの期待もしていなかったが、ラティを婚約者にすると言った時の僕の言葉は、なにも届いていなかったのだ。
あの時、確かに僕が妻にするのはラティ以外にありえないと、そう伝えたはずなのに。
短いため息をついて、この部屋に外界との遮断結界を張ってから一気に魔力を解放する。
部屋の中に渦巻く風の刃によって執務机は切断され、飛び散った紙は細切れになっていく。陛下や側近の宰相の衣服や護衛の近衛騎士の鎧さえもたやすく切り裂き、血がにじんでいた。
「……誰と誰の婚約ですか?」