婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
今度はエルビーナ様に向かって手をかざし、一瞬で炎の矢を放つ。炎の矢はエルビーナ様の身体を掠め、ピンクブロンドの髪を焦がした。青を通り越して真っ白な顔でガクガクと震えている。
ダメだ、お願いするくらいでは、まったく怒りがおさまらない!!
「フィル様っ!!」
ゆらりと視線を私へ戻し、数秒見つめ合う。
私が思いつくのは、これしかない。これでフィル様が止まらなかったら……そんな考えを振り払い、最大限の勇気を振り絞った。
「私は、フィル様が好きです!」
「……今、なんて言った?」
フィル様の瞳に光が戻ってきた。
「私はフィル様が好きです。だから離れるのが嫌で泣いてしまったんです」
「…………っ!!」
ああ、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!
こんな人前でフィル様に気持ちを伝えるなんて、普段なら絶対にやらないことだ。
せめてルノルマン公爵様の判定に合格してから言いたかった……!
顔も耳も首も、りんごのように赤く染まっているとわかるほど変な汗をかいている。羞恥のあまりフィル様の顔が見られなくて俯き反応を待っている。
フィル様は態度でこそ私が大切だと示してくれていたし、ここまで怒ってくれているのだから、きっとそういうことだ思う。
だけど、一向になにも反応しないフィル様に、もしかして私の勘違いだったのかと青くなり視線を上げた。