婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

やっと手に入れた希望


 処分が下されるまでは、治癒士のままだからと気持ちを入れ替える。
 それにしても、これだけの美形で素晴らしい人柄、王太子としての能力といい、これ程の逸材を手放した皇女は間違いなく見る目がない。

「ところで、なんだか毒を盛られる前より調子がいいのだけど、ラティシアの治癒魔法のおかげ?」
「そうですね。カールセン伯爵家特有の『癒しの光(ルナヒール)』という特殊な治癒魔法を使用しました。これは一般的な治癒魔法より効果が高いようです」

 きっとフィルレス殿下も知っているだろうけど、私からも我が一族の能力について説明する。

「やはりそうか。でもカールセン伯爵の御息女なら、どうしてここで働いているのかな? その血を絶やさないためにも、カールセン家の女性は早々に結婚すると聞いているけれど」

 この国の結婚した貴族の女性は、余程の事情がない限り屋敷で女主人として采配を振るう。特に伯爵家以上の家格であれば、未亡人でもない限り働くことはない。
 だからフィルレス殿下の疑問ももっともだ。

< 22 / 256 >

この作品をシェア

pagetop