婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 突然のルノルマン公爵の発表宣言に、私は心臓がドクリと大きく鼓動する。
 不合格でかまわないと思って受けてきた試験だ。落ちても納得できる。でもせめて、再挑戦のチャンスはほしい。

「ラティシア様は、いつもフィルレス殿下や民のことを考え行動されていらっしゃいました。さらに、ご自分の気持ちよりも国の平安を優先し、身を引く潔さは天晴れでございます。神竜や神獣が守るほどの友情を結び、どのような相手にも慈悲をお恵みになる。なによりも夫となるフィルレス殿下の寵愛を受けられておられる」

 とても褒められているように感じるけれど、ちゃんと聞くまでは落ち着かない。ぬか喜びだけはしたくないのだ。

「これ以上、王太子妃に相応しい人物はおりませぬ。ラティシア・カールセン、合格でございます!」
「ご……合格……!!」

 無意識で息を止めていたのか、肺に溜まった空気を緊張感と一緒に吐き出した。
 でも、まだ現実味がなくてふわふわと雲の上を歩いているようだ。

「私は貴女が導くこの国の未来を見たいと思いました。メイガン・ルノルマンはラティシア様へ生涯の忠誠を誓います」

 そんな私にルノルマン公爵が淑女の見本のようなカーテシーをする。
 その直後、いたるところで拍手喝采が沸き起こった。

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