婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「大変だけど嫌じゃないです……ちゃんと認めてくれて嬉しかったのです」
「大丈夫、僕はいつも君を見ているよ」
その言葉に今度は不穏な空気を感じた。なんとも言えない、拭いきれないモヤモヤした気持ちが胸に広がっていく。
「……リアルに見ていそうで怖い」
「まさか、そんなに暇ではないよ。少ししか見ていないから安心して?」
「!?」
少ししか見ていない?
少しでも見ているの?
この人のどこにそんな暇があるのだろうか?
そもそも本当に少しなのか?
そういえば、アイザック様も最近お疲れの様子だった。もしかして、アイザック様に皺寄せがいっているのでは?
さっきまで潤んでいた瞳が、一瞬で乾く。
「フィル様。ひとつお聞きしたいのですが」
「うん、なに?」
フィル様は、ニコニコと笑顔を浮かべて私を見つめる。
「具体的にいつ、どれくらい私の様子を見てるのですか?」
「だから少しだよ。日に何度か、タイミングをみて」