婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
星に願いを
王太子妃教育は死に物狂いで終わらせて、やっと平穏な日々を取り戻した。
なぜ、そんなに必死になったか? 当然、フィル様と離れて妃教育を受けるのだが、その際に朝昼晩と愛の言葉と、迂闊にも私から口付けすることになってしまったからだ。
有能な臣下のアイザック様と、この国の利益を考えたやむを得ない決断だけど、羞恥心で悶え死にしそうな時間を早く終わらせたかったのだ。
それにしても両親がきっちりと厳しく教育してくれたのと、治癒室で働いていた間に得た知識が本当に役に立った。
治療に関わる薬草や文献を調べるうちに周辺国の言葉や地理的、民族的特徴などを覚えていて、礼儀作法のベースが出来上がっていたのが大きいと思う。あとは応用や、細かい作法の違い、王太子妃としての関わり方を学んだ。
結婚式まではあと二カ月を切っている。
そこで王太子妃になる前に、どうしても行っておきたい場所があった。
「ラティの領地へ行きたい?」
「はい、結婚式の前までに行きたいのです。許可をいただけませんか?」