婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「フィル様! 見てください! 鳥が一緒に飛んでます!」
愛しい人と眺める故郷の景色は、本当に眩しくて懐かしくて、すべて私が守るべき大地なのだと深く刻み込んだ。
そんな空中デートを終えて、私たちはカールセン家の屋敷へ降り立った。
「リードさん! お久しぶりです、いつも領地を切り盛りしてくださって、ありがとうございます」
「えっ! ラティシア様ではないですか……! しかも殿下まで!? もしかして、私なにかやらかしましたか!?」
リードさんはカールセンの領地を代理で治めてくれている三十代半ばの男性で、フィル様が領主代理へと選んでくれた人材だ。真面目で実直、不正のふの字も感じられない、信頼できる人だ。
もともとは地方の男爵家の次男だったが、身を立てるため商会でこき使われていたのをフィル様にスカウトされたらしい。
就労条件がものすごく改善されたと泣いて喜んでいた。こちらとしては、妥当な条件しか提示していないのに、どれだけ酷い状況だったのか想像に難くない。