婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
王太子妃の前にフィル様を愛する女でいろと?
王侯貴族の義務である博愛よりも一途な愛を捧げろと?
そんなの、言われるまでもない。
私の心の真ん中にはフィル様しかいないのだ。
フィル様が私の隣に腰を下ろして灯りを消すと、一気に暗闇に包まれる。わずかな灯りを求めて空を見上げると、そこには満天の空が広がっていた。
幾万の星の光と細い三日月だけが私たちを見下ろしている。フィル様の温かくて柔らかな唇が私に重なった。
目を閉じるときにフィル様越しに見た、流れ星に願いをかける。
フィル様とずっとこの先も一緒にいられますようにと——。