婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
     * * *



 君は僕の気持ちをどれほど理解しているのだろうか?
 こんな灼けつくような嫉妬を抱えていると知ってる?
 君の笑顔がどれだけ僕の心を救ってきたかわかっている?

 どんな者にも手を差し伸べて、その心に寄り添って、花の咲くような笑顔を向ける。だから周りの人間は、すぐに君に夢中になってしまう。
 だからかな。すごく不安になるんだ。

 本当はいつだって君の自由を奪って閉じ込められる。だけどそれをしないのは、君がそばにいると、僕を愛していると言ってくれるから。
 あの隔離塔から出てから、自分と大切な人たちを守るために裏では卑怯なこともしてきた。こんな屑みたいな僕を知ったら、君は離れていくのかな。

 今も君の愛らしい唇を僕のものにしているのに、もっともっと僕だけでいっぱいしにしたくなる。だから深く貪るようにキスして、僕のことしか考えられなくするんだ。

 頬を上気させて、潤んだ瞳で見つめる君はとても扇情的で。
 こんな表情を知っているのが僕だけだと思うと、少しだけ黒く渦巻く感情が落ち着いていく。

 ねえ、これからもラティのそんな表情を見せるのは僕だけにして。
 でないと、嫉妬で狂ってきっと君以外を全部壊してしまう。

「ラティ、僕は君を絶対に離さないよ」

 ——僕のすべてをかけて、君を繋ぎ止めるから。


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