婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
業務命令
その後、王族の専属治癒士ということで、機密保持の書類や業務に関する契約書などにサインをした。
細部まで細かく書かれていた書類だったけれど、最初に契約書の約束は守ると宣誓書まで用意されていた。私のようなただの治癒士にも誠実にしてくださるフィルレス殿下には、ずっと健康でいてもらいたい。
私のできることはどんなことでもしようと心に決めた。
そうしてすべての書類にサインを終え、一度治癒室へ戻ることになった。私物の整理と治癒士たちへの挨拶も済ませたかったのでありがたい。
翌日からは専属治癒士として、フィルレス殿下の執務室へ出勤するように命じられてフィルレス殿下の執務室を後にした。
その日のうちに異動の通達が治癒室に届き、同僚たちから患者様が驚くほどの喝采を浴びた。
エリアス室長やユーリたちから祝いの言葉をもらい、急な異動にも関わらず送別会まで開いてくれることになった。
思ったよりも多くの治癒士たちが参加してくれて、こんなところにも私の努力の結果が現れていた。
治癒士たちの気持ちが嬉しくて、潤んだ瞳を誤魔化すのが大変だった。