婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「そんなに見つめられると……照れるな」
ほんのりと目元を桃色に染めてはにかむ美形は、びっくりするほど私の心を鷲掴みにした。公務では見ることのないフィルレス殿下に心臓がうるさいほど鼓動する。
「え? あっ、申し訳ございません。すでに診察を始めておりまして、フィルレス殿下の顔色などを確認しておりました」
「あ、そう……君は本当に真面目だね」
急に表情をなくしたフィルレス殿下は、そばに控えていたアイザック様に視線で合図を送る。
アイザック様が扉の外にいた騎士に声をかけると、王族付きの侍女たちが私の後ろに並んだ。
この展開の意味がわからず、侍女たちとフィルレス殿下を交互に見てしまう。
「もしかして、この侍女たちの診察ですか?」
「違うよ、言っただろう。君にしか頼めないことがあるって。まずはこの侍女たちの言う通りにしてくれるかな?」
「ラティシア様、それではご案内いたします。こちらへどうぞ」
言われるがまま侍女についていくと、隣の部屋に案内される。部屋に入ると色とりどりのドレスが並んでいて、侍女たちが瞳をギラリと光らせ慌ただしく動きはじめた。