婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「まあ、ラティシア様のお肌は本当に白くて素敵ですわ。でも潤いが足りないようなので保湿してこちらのクリームを塗りますね」
「こんなに美しく輝く銀色のお髪を見たことがございません。さらに艶を出すためにヘアオイルを使いましょう」
「アクセサリーはフィルレス殿下の指示でブルーダイヤモンドのセットと決まっておりますので、グラデーションが素晴らしいこちらのドレスがよろしいかと思います」
なにがなんだかわからず、されるがままにしていた。
気が付けば鏡に映るのは、複雑に髪を結い上げ美しくドレスアップしたひとりの淑女だった。
首もとと耳には価値を理解したら震えそうなほど、煌びやかなブルーダイヤモンドのネックレスとイヤリングがキラキラと輝きを放っている。
ドレスの裾は淡いパープルで肩の方は澄み切った空色になっていてグラデーションが美しい。動くたびに光に反射するように小粒の宝石が縫いつけられていた。
ちょっと待って、このスカイブルーのダイヤモンドは伯爵家クラスではお目にかかれないような希少価値の高い宝石よね!?
しかもドレスについている宝石だって、ひとつひとつがかなり質のいいダイヤモンドじゃないかしら!?
あまりに高すぎる価値のドレスとアクセサリーに、頭がクラクラしてくる。私は顔を引きつらせながら恐る恐る侍女に聞いてみた。
「あの、これはどういうことでしょうか……?」
「フィルレス殿下のご指示通りにさせていただいたのですが、お気に召しませんでしたか?」
「え? フィルレス殿下の指示ですか?」
「はい、ラティシア様の魅力を存分に引き出し、国一番の淑女に仕立てよとのご命令でございます」