婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

僕の世界が色づいた日


 公明正大で常に穏やか、政治的手腕にも優れた王太子。

 それがフィルレス・ディア・ヒューレット、僕の一般的な評価だろう。

 だけど、それは僕が周囲の期待に応えて作り上げてきた王太子像だ。
 この世界の王族や貴族たちは、膨大な魔力を身体に抱えて生まれてくる。魔物などの外敵や、他国からの侵攻を防ぐために魔力の多い者同士が結びついた結果だった。

 しかし膨大すぎる魔力ゆえ生まれた赤子が制御できずに、ところかまわず魔力を放出してしまうことがあった。
 そういった赤子は、周囲に危害が及ばないよう隔離される。そして赤子は早かれ遅かれ魔力が暴走して、周囲を巻き込んで十歳までには自ら消滅していくのだ。

 それは人間が強大な魔力を貪欲に求めたゆえの、悲しい代償だった。

 強力な結界が張られた塔に閉じ込められて、魔力が暴走しても()()()の被害だけで済むように世話係を決め、十歳まで生き残れば跡取りとして生家に戻された。

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