婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
そして今度は最強の王族や貴族として国のために尽くせと言われる。
僕は歴代でも随一の魔力を持ち、例にもれず隔離された赤子だった。
まあ、隔離は仕方のないことだと思う。周りを巻き込むほどの魔力暴走だ。両親、つまり国王や王妃が近寄れないのは理解できる。
だけど手紙ひとつよこさず、王太子としての知識は本で習得せよと大量の蔵書を送られても、両親の愛というものを感じることはできなかった。
命懸けで世話をしてくれて読み書きを教えてくれたのは、夫を亡くしたばかりの子爵夫人だったカトリア・ルースとその息子アイザックだ。
彼らだけが、僕に寄り添ってくれた。
それなのに僕が十歳まで生き残ったと知ると、両親は用が済んだというように心の拠り所だったカトリアとアイザックを追い出そうとした。
今まで本を送るだけでなんの興味も示さなかったくせに、突然僕のことを自慢の王子だと言って管理しようとするのは本当に受け入れられなかった。
だから初めて両親に対面した時に、怒りに任せて魔力を放った。
死人は出ないように調整したから建物の被害で済んだはずだ。壁が崩れ、天井が吹き飛び、風通しのよすぎる部屋になり両親は言葉が出ない様子だった。