婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
だって王太子殿下の婚約者だ。
つまり順当にいけば、いずれ王妃になるのだ。そんな国に関わる重大案件を、こんなあっさりと決めていいわけがない。
それなのに、フィルレス殿下は楽しそうに笑っている。
「あははっ! 素の君もいいね。もっとありのままのラティシアを見せてよ」
「いえいえいえいえ!! ありえません!! 一瞬とはいえ素を出してしまい失礼いたしましたが、この部分だけ訂正してください!!」
「残念だけど国王の玉璽ももらってるから、訂正なんて無理だよ」
なんてことだろう。
国王陛下の玉璽を押しているということは、この書類は国王陛下が宣言したのと同じ意味合いになる。つまり、よほどのことがない限り内容は覆らない。
なんてことしてくれたのっ!! フィルレス殿下は!!
「そんな……いったいなぜ私が婚約者に……なにか、なにか婚約解消をする方法はないのですか?」
衝撃が強すぎて、頭がクラクラしてくる。