婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「そんなに僕の婚約者になるのが嫌だった?」
少ししょんぼりした様子のフィルレス殿下は、まるで捨てられた子犬みたいだ。だけどここで仏心を見せたら、断る機会がなくなりそうなので心を鬼にする。
「嫌ですとか個人の感情の前に、私には荷が重すぎます」
「そうか、王太子妃や王妃になるのが嫌なんだね? それなら王太子を返上しよう」
「はいっ!? なぜそうなるのですか!?」
どう考えてもやめるのは婚約の方だと思うけど!?
現実的に考えても私が適任でないと理解してもらわなければ!!
「よろしいですか、フィルレス殿下が王太子を返上などしては国の損害が計り知れません! しかし私は実家から追放され後ろ盾もなく、妃としての礼儀作法にも不安があり、治癒士としてもまだ学ぶべきことがたくさんあります。このような者が婚約者では他の貴族から反発も出ることでしょう。つまり不要な争いを呼ぶことになると、おわかりいただけますか?」
「そうだね、君が非常に真面目で、物事を客観的に受け止められるのはよくわかったよ」
……なにかズレた受け止め方をされていませんか?