婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「だからこそ、僕の妻に相応しいと思っているのだけど」
にっこりと微笑むフィルレス殿下は本当に麗しくて、思わずその言葉に流されそうになるもハッと現実に帰る。
「いえ! 私にはこんなお役目は無理です!! どうか婚約の解消をしてください!!」
「うーん、それは困ったな。すでに貴族たちの前で発表してしまったし、玉璽もあるし撤回は難しいだろうね」
「そんな……!!」
そこでフィルレス殿下は、甘くとろけるような笑みを浮かべて私にとどめを刺してきた。
「もう僕からは逃げられないのだから、あきらめて。その代わり、僕なしでは生きていけないほど甘やかすから」
「あきらめません! もう私を国外追放してもかまいませんから、どうか婚約を解消してください!」
「そこまで拒否されるとは思っていなかったな……うーん、それなら条件を設けようか」
訝しげにフィルレス殿下を見つめると、私の腰を抱きよせて耳元で囁いた。
「ラティシアが王太子妃に相応しいかどうか、三大貴族に判定を頼もう。本来は婚約発表の前に受けるものだけど、僕が省略したんだ。だけど、ひとりでも反対したら婚約を解消するよ」