婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 三大貴族とは、このヒューレット王国を支える公爵家で貴族の中でも特別強い発言権を持つ。私のようなただの治癒士では簡単に声すらかけられない相手だ。

「……わかりました。おひと方でも反対されたら婚約は解消ですね?」
「うん、そのためにラティシアに判定試験を受けてもらう必要があるけど、公爵家には僕から通達を出しておこう。判定の期間は半年。その間、僕は君を本気で口説き落とすから、覚悟してね」

 そう言って、フィルレス殿下は離れる間際に私の頬に軽く唇を落としていく。
 頬に触れただけなのに柔らかな熱が広がり、じわじわと私の顔を赤く染め上げた。

「や、約束ですからね!?」

 余裕の笑みを浮かべるフィルレス殿下を見て、全力で不適格者の判定を受けて婚約を解消すると決意した。


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