婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
心は悲しみであふれているのに、待ったなしで領地経営の責務が私の肩に重くのしかかる。私もビオレッタもまだ学生で領地経営なんて無理だから、民が困らないように手を打たなければいけない。
そこで三歳上の婚約者マクシス様をこの屋敷に迎え入れいることにした。彼は公爵家の三男で、もともと伯爵家に婿入りする予定だった。私が学園を卒業するまでの間は、結婚を早めて夫になったマクシス様に代理を頼もうと考えた。
ありがたいことにマクシス様は、すぐに快諾して伯爵家にやってきてくれた。
侯爵令嬢の友人に招待された王都の夜会で結婚の報告と代理当主のマクシス様を紹介することにした。当然マクシス様にエスコートをお願いしていたのに、直前で遅れるから先に向かってほしいと知らせが届く。
仕方なくひとりで会場までやってきた。憐れみの視線が突き刺さったけど、気にしていない素振りをして友人へ挨拶に向かった。
だけど、そこにいたのはビオレッタをエスコートするマクシス様だった。
「マクシス様!? どうして……」
「ラティシアか、遅かったな。まあ、いい。ここで宣言したいことがある」
「その前にこの状況をご説明いただきたいですわ」
私はマクシス様とビオレッタを睨みつけて、気丈に振る舞った。