婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 パーティー会場には国王から呼び出された貴族たちが集まり、社交の場になっている。重大発表についても、さまざまな憶測が飛び交っていた。

 内容は王太子が王位に就くだの、帝国と戦争が始まるだの、新しい婚約者ができただの、好き勝手話していた。
 その話を小耳に挟んだ見た目だけの夫が、持論を展開しはじめる。

「いくらなんでも、先日婚約を解消されたばかりだというのに、次の相手が決まったというのはさすがにないだろう。即位するにも伴侶は必要だし、おそらく帝国関係の知らせではないか? 転移の魔道具で呼び出すほどだから、ことさら重要な話なのだろう」
「そうね、だったらわたしには関係のないことだわ。マクシス様さえお話を聞ければ問題ないでしょう?」
「だが、夫婦で出席するように通達が来ていたから無視できないだろう。わがままばかり言うな」

 たまに顔を合わせても、以前のような甘い空気はどこにもない。
 お互いに愛人もいて、よくある冷め切った貴族夫婦だ。やっと準備が整ったのか、国王陛下を先頭に王族たちが入場してきた。
 国王陛下、王妃様、それに続いてフィルレス殿下。そこまではいつもの光景だ。

「——え……嘘。まさか……!?」

 フィルレス殿下にエスコートされて一緒に入場してきたのは、かつて伯爵家から追い出したはずの義姉、ラティシアだった。

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