婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
衝撃が大きかったけれど、わたしはすぐに考えを切り替える。
それならラティシアに言って、義兄になるのだからと王太子に会わせて貰えばいいんだわ。会うことさえできれば、ラティシアよりもわたしの方がいいって思うはず——
わたしはすぐにタウンハウスに戻って、ラティシアに手紙を書いた。いつ面会できるか、王太子にも義妹として挨拶をすると書けば、あの女は頭が固くて真面目が取り柄の女だったから、必ずセッティングするはずだ。
だけど二週間も待ってもラティシアからの返事はなかった。それまでに五通は送っているから、すべてが届いていないとは考えにくい。仕方ないので、また王城へ出向き門番へ知らせが来ていないか確認しみることにした。
「うーん、申し訳ないですが、ラティシア様への面会者の話は聞いてないですね」
「そんなはずないわ! もう五通も手紙を出しているのよ!? なにか行き違いがあったはずよ!!」
「でも知らせが来ていないので通すことはできません。お帰りください」
「ちょっと! 誰に向かって口を利いているの!? 門番のくせに態度がでかいのよ!! いいからわたしを通しなさい!!」
まったく話の通じない門番に痺れを切らして、むりやり通ろうと足を進める。
「これ以上進んだら、侵入者として捕縛します。牢屋に入りたいのですか?」
「牢屋ですって!?」
「許可なく立ち入るのだから、侵入者となります」
そんなこともわからないのかと馬鹿にした顔で、門番はわたしを見下ろす。悔しくて腹が立ったけど、牢屋になんて入りたくない。
「本当にあんたは無礼だわ!!」
それだけ言って踵を返した。
もう手の届かない存在になってしまったラティシアに、わたしはなにもできなかった。