婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

就労条件の変更を希望します!


「フィル様!! やはりこの契約書はおかしいです!! 明らかに就労条件が法律違反です!!」

 私は昨夜、悔しさのあまりフィル様と交わした契約書を米粒みたいな文字までじっくりと読み込んだ。その条件に顔を青くしながら、深く考えずにサインしたことを心の底から後悔した。
 寝室は一緒だったけれど、中央に衝立(ついたて)が置かれて配慮はされていた。どうせ配慮するなら部屋を別にしてほしかった。

 そこで朝一であの日受け取った契約書の控えを執務机に置き、バンッと両手を叩きつけた。法律違反なら訂正してもらえるのではないかと思ったのだ。
 ……勢いがつきすぎて、手のひらが地味に痛い。

「ラティ、おはよう。今日も美しく聡明だね」
「あ、おはようございます。それより、この条件は修正してください!!」
「どの条件?」

 意外にもフィル様が素直に話を聞いてくれるので、希望の光を感じて法律違反になりそうなところを挙げていく。

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