婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 普段は馬鹿にされるのに、困ったときだけ頼られるのが我が一族だ。月の女神の末裔だなんて話をしても、馬鹿にされて笑われるだけだったので、今では直系の子孫に伝えられるだけだった。

「それにラティシアはずっと攻撃魔法が使えるビオレッタが妬ましくて虐げてきたのだろう? そんな心の醜い女を妻にしたくなかったのだ」
「え? そんなことしていませんわ」
「ひどいわ……お義姉様はそれが当然だと思っているから、わたしがどんなに苦しかったかわからないのよ!」

 そう言って、ビオレッタは泣き出してしまった。

「本当に無神経極まりない。君のような人間とは同じ屋敷にいるのも許せない。このまま出ていってくれ。当主命令だ」

 本当に心当たりのないことで責められ、周りの貴族たちもヒソヒソと話し私に厳しい視線を向けてくる。
 もうその場にはいられなかった。

 私の味方はどこにもいない。
 両親も兄も亡くして、婚約者も失った。
 唯一の味方だと思っていた義妹に裏切られ、私はもうなにもかも嫌になり逃げ出すことしかできなかった。

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