婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
「審判に選ばれたものは、この判定に関していかなる不正も贔屓もしないと、太陽の創造神に魔法宣誓しております。もし誓いを破れば命はありません」
「わ、わかりました」
そんな命なんて懸けないでほしかった……!!
でもそれならいくら不合格にしてくれとお願いしても、話は聞いてもらえないわね。最悪、生涯無料治癒をつけて頼もうかと思っていたのに……!
不興を買うのは簡単だけど、できるだけ穏便に進めたい。まあ、でも王太子の婚約者の判定試験なのだから、厳正さが必要なのは納得だ。
「そこで今回出す課題は——わたくしが好きな殿方に嫁げるようにしていただきたいのです!」
……え、それが課題?
悪女と名高いイライザ様を好きな人のもとへ嫁げるように? うーん、この課題……わざと失敗するのは良心が咎めるわね。好きな殿方がフィル様だったら、喜んで身を引くけれど。
「あの、ちなみに好きな殿方というのは、どなたですか?」
「そっ、それは……! その、ええと……ジル、ですわ……! わたくしの護衛騎士のひとり、ジルベルト・モーガンですわ!!」