婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
アリステル公爵家の判定結果
ジルベルト様の命が危険な状況に、頭の芯が冷静になっていく。
「イライザ様、私が治療します。息さえあれば、どんな傷でも治せますから」
「ラティシア様……!」
視界はクリアになり、周囲の雑音は入ってこない。今目の前で消えかかっている命を救うため、全神経を集中させた。
「癒しの光」
まずは呼吸の確保が必要だから、咽頭から重点的に治癒していく。次に身体に負った七割もの熱傷だ。
広範囲に及ぶ熱傷はショック状態を引き起こす。炭化しているところは後回しにして、先に全体的に回復させた。最後に炭化してしまった腕や足に癒しの光を集約していく。
庭園を照らす光が収まると、瞳を閉じていたジルベルト様が呻き声を上げた。
「うっ……」
「ジル!!」
「あれ……? 俺は——」
ジルベルト様の言葉を遮って、イライザ様が激しく叱責する。
「馬鹿っ! わたくしの前でこんな怪我をするなんて、大馬鹿ですわ!!」
「……イライザ?」